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2019.1.12 | カテゴリ:ブログ

『食べたいものを食べて欲しい』


新しい年が明けました。
札幌は、穏やかな天気のお正月でした。
近くの神社に初詣に行き、
今年は良い年となりますように・・・と、
祈願しました。
 
昨年、北海道に
大きな地震がありました。
電気が通じて、テレビに映った、
地すべりの映像は
あまりにも衝撃的でした。
この映像をみていた、
全国の仲間たちは、
心配してくれていたであろうと、
安否を気遣ってくださった方々に
感謝の想いがあふれたことは忘れません。
 
私が働く特別養護老人ホームでは、
入居されている半数以上が
90歳を超えています。
100歳超えも数人いらっしゃいます。
そんな人生の大先輩たちに、
学ぶことは本当に多いです。
 
地震のため、断水と停電で、
十分な食事が提供できない時に、
「こんな状況で、
食事を出してもらえるだけでありがたい」
と言ってくださいました。
 
「梅干しとか鮭とか
入っていればいいのに・・・」
塩むすびを配られ、
不満を言った職員に対し、
「何を贅沢言っているの。
戦時中はね・・・」
そう、嗜めていました。
そんな大変な時代を
生きてこられた大先輩たち。
 
施設で提供される食事は、
集団に向けてのお食事です。
一人ひとりの口に合った料理の提供は
難しいのが現実です。
高齢者が施設に入所される際には、
ご家族にそのことを説明しますが、
「好き嫌いなく、何でも食べますから」
大抵の場合、そのように言われます。
 
本当にそうなのでしょうか?
 
大変な時代を
生きてこられた大先輩たちは、
決して、食べ物に文句は言いません。
食べたくないものは、そっと、
「これ、手をつけていないから
あんた食べなさい」断り方も上手です。
 
職員には、食事の様子をみながら、
その方の好みを探ることをお願いします。
高齢者においしいかどうかを尋ねると、
作り手を気遣って
「おいしい」とこたえます。
野菜を食べない方も多く、
「嫌い」
「噛み切れなくて食べにくい」
そんなことがわかってきます。
 
食事になかなか手をつけない
高齢者の場合、
ご家族の協力を得て、
ご本人が好きなものを
持ってきていただいたり、
購入させていただいたり
することがあります。
 
ケンタッキーフライドチキンは、
意外にも高齢の方々は
好んで召し上がります。
普段は細かくきざまなければ
食べられないのに、
骨無しケンタッキーなら、
手に持てるように、
棒状に切ると食べられます。
好きなものなら、食べられるのです。
おいしそうに、笑顔で食べてくれます。
 
大切なのは、
「おいしい」
と思うものを食べることでしょう。
 
「おいしい」ものを食べたとき、
自然に笑顔がでてきます。
幸せだなぁ、と感じることができます。
食べたものが、
エネルギーとなっていることを
実感することができます。
 
私たちの体は、
食べたものでできています。
自分にとって
良いと思うものを食べることが
大切なのでしょう。
「身体に良いから仕方なく食べる」では、
エネルギーに変換されるのに、
時間がかかってしまうような気がします。
 
現在105歳で、
「お粥は嫌い。
私は最期までご飯を食べる」
そのように言われてきた方がいます。
お粥は嫌いでも、お茶漬けは好きでした。
形のあるものはもう飲み込めなくなって、
何を食べてもらうか、頭を悩ませます。
 
一般的には、ミキサーにかけたものや、
栄養価の高い栄養剤のゼリーや飲み物に
食事形態は変えたほうが
食べられるのかも知れません。
しかし、その方はゼリーが嫌いでした。
 
パンは好きでした。
牛乳に浸して、
パン粥なら食べることがあります。
ご飯はお茶漬けにすると
食べることがあります。
ご家族がもってきたアイスクリームは、
「甘いね」
と食べてくれることがあります。
 
ベット上での生活となりましたが、
「食べる」「食べない」
「いる」「いらない」
意思表示をはっきりされ、
職員は、
ご本人の希望に沿ってお世話をします。
食べられる量は、少なくなっています。
しかし、
はっきりと「食べる」と言われます。
食べる方は、やはりお元気です。
 
時々、「栄養は足りているんですか」と
職員に聞かれます。
そんなときは、その方にとって、
今、何が大切なのかを一緒に考えます。
 
面会に来られるご家族とも、
できる限りお話をする機会をつくります。
「好きそうだった物もって来ましたから」
笑顔で言ってもらえると、
私もうれしくなります。
 
特別養護老人ホームは、
高齢者にとっては、終の棲家です。
生活の場です。
施設でできることは限られます。
 
職員が、家族が、協力して
サポーターとして
その方の生活を支えています。
 
「食べたいものを食べて欲しい」
その方が好きな食べ物を知っていて、
「食べますか」と聞いてあげて欲しい。
食べるものは好物であってほしい。
そう願って、どうサポートしていくかを
考える日々を過ごしています。

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◆執筆者プロフィール◆

佐藤三佳(さとうみか)
サイモントン認定カウンセラー
ニックネーム:みかりん
・ちょっと変わった管理栄養士
・きりん好き:旭山動物園通いが増えそう
・響きの杜クリニック2階
ひびきの杜ポポロにて毎月第3木曜日
 サイモントン療法カウンセリングを提供 

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2019.1.11【第518号】より

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